先日、精神科訪問看護をご利用いただいている利用者様より、私たち「あやめ」の事業所宛に一通のお手紙が届きました。
そこには、ご自身のこれまでの歩みとともに、訪問看護との関わりの中で感じてこられた率直な想いが、丁寧な言葉で綴られていました。
この手紙は、単なる「感謝の言葉」ではありません。
私たちが大切にしている事業の目的、そして精神科訪問看護という仕事の本質を、改めて教えてくれるものでした。
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この利用者様との出会いは、病院の相談員様からのご連絡がきっかけでした。
内服薬の自己管理が難しくなり、主治医からは注射治療の提案もありましたが、治療環境の変更に不安があり、「今の形で治療を続けたい」というご本人の想いが強くありました。
そこで、内服管理の支援と訪問看護の導入という形で、私たちの関わりが始まりました。
初回訪問時、ご本人は人見知りで緊張されている様子があり、体調や気持ちについて多くを語られることはありませんでした。
一方で、お部屋にはご本人の感性が感じられる芸術的な作品や物が並び、その話題になると、ご自身の言葉で丁寧に説明してくださいました。
私たちは、その世界観を尊重しながら、「ご本人のペースで関係を築くこと」を大切に関わりを続けていきました。
訪問看護の中で印象的だったのは、服薬支援を行う中でご本人から出た一言でした。
「お薬カレンダーへのセットを、自分でやってみたい」
支援を受ける立場でありながら、「自分でできることは自分でやりたい」と向き合う姿勢は、担当看護師の心に深く残っています。
私たちは、その想いを尊重し、見守りながら支援を続けました。
また、訪問を重ねる中で、訪問時だけでなく、電話で気持ちを伝えてくださるようにもなりました。
日常生活の中で感じたつらさや不安を言葉にして表現する機会が増え、訪問看護が「安心して気持ちを話せる場」になっていったことを感じています。
関わりの中で、ご本人にとって最も大きな出来事は、お母様を亡くされたことでした。
長年強い結びつきのあった存在を失った悲しみは、計り知れないものだったと思います。
お手紙の中には、次のような言葉が綴られていました。
「正直、未だに悲しみは拭えません。
夢なら早く覚めてほしいと、想わない日はありません。」
深い悲しみの中にいながらも、ご本人は現実と向き合い、火葬の手続きや生活の整理などを一つひとつ進めていかれました。
その姿は、担当者にとっても忘れられないものとなっています。
悲しみが消えることはありません。
それでも、ご本人は訪問看護との関わりの中で、気持ちを言葉にしながら、現実を生きる時間を重ねてこられました。
今回のお手紙には、私たちとの関わりについて、こんな言葉も記されていました。
「皆さんがそばにいてくれたことで、
私は“今を生きている”と感じることができました。」
また、
「皆さんと出会えてよかったと、心から思っています。」
という一文もありました。
これらの言葉は、私たちが目指している
「ご利用者様とご家族様に寄り添い、愛し、幸せになっていただくこと」
そのものだと感じています。
支援とは、特別なことをすることではありません。
そばにいて、話を聴き、現実を一緒に確認し、その方が「生きていく力」を取り戻していく過程に伴走することだと、私たちは考えています。
手紙を読んだ職員からは、次のような声がありました。
「辛かった気持ちを、改めて教えてもらえたことがありがたかった」
「自分たちの関わりが、人の人生を支える一部になっていると実感できた」
この仕事は、決して楽な仕事ではありません。
それでも、「夢や希望、勇気を届けること」、そして 誰一人として孤立させない社会を目指すこと が、私たちの使命です。
また、このような言葉を受け取れることは、
一緒に働く仲間の心の支えとなり、誇りとなるもの でもあります。
精神科訪問看護を通じて、
一人ひとりの人生に寄り添い、
希望をつなぎ、
安心して生きられる社会を広げていくこと。
それは、結果として
日本の精神的な安定と、社会全体の発展に貢献すること につながると、私たちは信じています。
今回いただいたお手紙は、その道のりが間違っていないことを、静かに、そして力強く教えてくれました。
心のこもったお手紙を届けてくださった利用者様に、心より感謝申し上げます。
この想いを胸に、私たちはこれからも、ご利用者様・ご家族様・そして共に働く仲間とともに、歩み続けてまいります。
