今回は、支援を通じて大きく変化された一人のご利用者様と、それに寄り添ってきたあやめ氏家、看護師・Fさんへのインタビューをお届けします。
「この言葉を聞くためにこの仕事を選んだ」と語るFさんの胸に残るエピソード。支援の現場で何があったのか、丁寧に振り返ります。
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ご利用者様との出会いは、精神科病院を退院された直後のことでした。
当時23歳、解離性健忘や摂食障害の診断があり、1ヶ月も自宅で過ごすことができず入退院を繰り返していたといいます。
目を離すと車道に飛び出したり、2階から飛び降りようとしたり、リストカットなどの自傷行為も頻繁に見られ、ご家族だけで支えることは困難な状態でした。
Fさんは当時の印象をこう振り返ります。
「口数が少なく、表情も硬かったですね。退院直後ということもあり、摂食や解離、フラッシュバックなどの症状が強く出ていて、とても苦しそうでした」
支援の中でも特に難しかったのが、食事への対応でした。
「入院したくないという気持ちは強くあっても、ほとんど食事や水分が摂れない状況が続いていました。どうすれば少しでも口にしてもらえるのか、どんな声をかけるのがいいのか、本当に悩みました」
また、自傷行為への対応も繊細なものでした。
「『やってはいけない』とは言わず、『痛くないですか?』『それほど辛かったんですね』と、その気持ちに寄り添うよう努めました。
自分を責めてしまうときには、『あなたは何も悪くない。私たちは味方ですよ』という言葉を何度もかけてきました」
関わりを重ねる中で、ご利用者様の表情や行動に変化が見え始めました。
「最初は外出に対する恐怖が強かったのですが、『一緒に桜を見に行こう』と誘ったことがきっかけで、少しずつ外に出られるようになっていきました。
今では『お散歩の日』を楽しみにしてくださるまでになったんです」
それから1年4ヶ月が経ち、入院はたったの1回。
食事も摂れるようになり、自傷行為もなくなりました。
そしてついに、ご本人から「就職が決まりました」と報告が届きました。
「訪問中に報告を受けて、誇らしい気持ちでいっぱいになりました。
不安もあるようなので、プレッシャーを与えないような言葉がけを大切にしています」
最も心に残っているのは、ご利用者様からのこのひと言。
「Fさんと出逢えて本当によかった。就職は怖いけど、何があってもあやめさんがいてくれるから」
その言葉を聞いた瞬間、Fさんの目には涙が溢れたといいます。
「私はこの言葉をもらうために、この仕事を選んだんだと感じました。
心が震えるというのは、こういう瞬間のことを言うんですね」
今回の支援を通して、Fさん自身も多くのことを学んだといいます。
「日々悩みながらやってきた関わりが間違っていなかったと、初めて確信できました。
支援を必要としている方はまだたくさんいます。これからも一人ひとりに合った支援を丁寧に届けていきたいと思っています」
「出逢えてよかった」——その一言は、支援者にとって何よりの報酬です。
私たちも、これから関わるすべての方にとって、そんな存在であり続けたいと思います。
※ご利用者様のプライバシー保護のため、一部内容を変更・編集しています。
今後も、訪問看護ステーションあやめの現場から、心温まる支援のエピソードをお届けしてまいります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
私たち、訪問看護ステーションあやめは、ご利用者様に夢、希望、勇気を届けるだけでなく、「スタッフ一人ひとりの“人としての成長”」、「一緒に働く仲間の物心両面の幸せの追求」も大切にする職場です。
日々の訪問の中で感じる「ありがとう」の言葉、
仲間と支え合いながら乗り越える困難、
ご利用者様やご家族との温かな交流──
そうした体験が、看護師・スタッフとしてだけでなく、「ひとりの人間」としての力を育ててくれます。
あやめには、理念に共感し、誰かの幸せのために働く仲間が集まっています。
「感謝を忘れない」「利他の心を大切する」「夢や希望を届ける」「日本の自殺者をゼロにする」「日本の精神的安定と日本の発展に貢献する」
そんな思いを共有できる方と、一緒に働けることを心から願っています。